なぜ知育に虫なのか?数・種類・寿命が知育に向いている理由

なぜ、魚でも鳥でもなく、虫なのか? 外遊び・自然学習
なぜ、魚でも鳥でもなく、虫なのか?
虫・自然観察・幼児・多様性

自然の中には、虫以外にもたくさんの生きものがいます。魚も、鳥も、トカゲも、哺乳類もいる。それでも子どもと自然の中を歩く生活を続けていると、私はやっぱり「幼児の最初の自然観察には、虫ってものすごく向いているな」と感じます。

この記事では「虫とりをすると何が育つのか」ではなく、もっとその手前にある、なぜ魚や鳥などではなく「虫」が、幼児の日常の観察対象としてこんなに面白いのかを、わが家で2歳児と虫を探し、飼育してきた経験から考えます。

たった1時間の公園でも、こんなに違う虫に出会える

8月半ば、2歳11か月の子どもと、自宅から自転車で5分ほどの都心の公園へ虫とりに行きました。

虫とりだけを1時間続けたわけではありません。散歩したり、走ったり、草むらをのぞいたりしながら、虫網を持って歩くくらいです。

それでも、その日に捕まえたのは次の虫たちでした。

  • アオモンイトトンボ 2匹
  • シジミチョウの仲間 2匹
  • イチモンジセセリ 1匹
  • ショウリョウバッタ 3匹
  • カマキリ 1匹
  • シオカラトンボ 1匹
  • カメムシの仲間 2匹

捕まえなかったものまで含めれば、トックリバチ、ミンミンゼミ、スズメバチ、アリ、アゲハチョウ、クモ、ダンゴムシなどにも出会いました。

もちろん、クモやダンゴムシは昆虫ではありません。でも幼児にとっては、どれも足元や草の中にいる「小さな生きもの」です。

幼児が大きな虫網を持って都心の公園の草むらで虫取りをする様子
特別な里山ではなく、家から自転車で5分ほどのいつもの公園。
ここが虫のすごいところ
珍しい生きものだから面白いのではなく、普通の都市公園でも、短い時間の中でまったく違う生きものに次々と出会えることだと思います。

虫との自然体験は「休日のイベント」にしなくても成立する

もちろん、毎回1時間も虫とりをしているわけではありません。

わが家では、保育園へ行く前に10〜15分だけ近所を歩くこともよくあります。それだけでも、コフキコガネがいたり、シロテンハナムグリがいたり、コアオハナムグリがいたり。短い散歩でも、何かしらの発見があることは珍しくありません。

近所の散歩道で足元の虫を探しながら歩く幼児
登園前の短い散歩でも、足元や植え込みを見るだけで発見があります。

つまり虫との自然体験は、「今日は自然教育の日だから、山へ行こう」と構えなくてもできます。

朝の10分。保育園までの道。近所の公園。買い物の途中。そういう日常生活の中に、そのまま観察対象がいます。

もちろん里山や山へ行けば、都市部では出会いにくい種類や、より豊かな環境を見ることができます。それには別の大きな価値があります。

でも幼児との自然観察では、珍しい虫に一度出会うことだけでなく、身近な虫に何度も出会えることも、とても大切だと感じています。

身近だから、同じ場所を何度も見ることができる

近所で虫を探せることには、もう一つ大きな利点があります。同じ場所を繰り返し見られることです。

子どもも、以前虫を見つけた場所を少しずつ覚えるようになりました。

「あ、ここコガネムシのとこ!」
「今日はいないね。なんでいないのかな?」

以前コガネムシを見つけた場所を通ったときの言葉です。その日は、同じ場所を探しても見つかりませんでした。

同じ木、同じ草むら、同じ道でも、毎回答えが同じではありません。前回いた虫が今日は見つからない。逆に、今まで見なかった虫が突然現れる。季節が進めば、目立つ虫そのものが変わっていきます。

虫は「一度見たら終わり」の観察対象ではありません。

身近だから繰り返し見られる。繰り返して見るから、「前と同じ」と「前と違う」の両方が出てきます。

幼児自身が見つけて、近づける野生の生きもの

鳥も、とても身近な生きものです。ただ、木の上や空を飛んでいることも多く、大人が先に見つけて「あそこにいるよ」と教える場面も少なくありません。魚なら、水辺まで行って水の中をのぞく必要があります。

その点、虫は幼児の目線に近い場所にもいます。

足元のアリ。草の上のバッタ。葉っぱの裏の小さな虫。木の幹のセミ。花のまわりを飛ぶチョウやハチ。

だから親より先に、「なんかいる!」と子どもが見つけることがあります。

幼児が草や落ち葉の下をのぞいて小さな虫を探している様子
「どこにいるかな」と、自分の目で探せる距離にいる。

そして、安全に観察できる虫であれば、自分で近づいたり、しゃがんだり、網を伸ばしたり、ケースに入れて手元で見たりできます。

野生の生きものなのに、「自分で見つけ、自分から近づき、目の前で確かめる」ところまで幼児自身が参加しやすい。

これも虫のかなり特殊なところだと思います。

「虫は種類が多い」の本当の面白さ

虫は種類が多い。これはよく言われることですが、幼児との観察で面白いのは、単に図鑑にたくさん名前が載っていることではありません。

種類ごとに、姿も、動きも、食べ方も、暮らし方もかなり違うことです。

国立科学博物館は、これまでに名前が付けられた昆虫だけでも約100万種に及び、体のつくりから行動・能力まで非常に高い多様性があると紹介しています。

でも、家庭でその100万種を知る必要はありません。身近な数種類を比べるだけでも、その違いは十分に見えてきます。

同じ甲虫でも、飼ってみると全然違った

わが家で実際に飼育した虫だけでも、かなり違いがありました。

カブトムシのオスは比較的姿を見る機会が多く、昆虫ゼリーもどんどん減りました。一方、クワガタムシは隠れている時間が長く、なかなか姿を見られないことがあります。

クロカナブンは、ふたを開けるとすぐ飛んでいこうとする。ドウガネブイブイは葉を食べていた。一方、コアオハナムグリは昆虫ゼリーにも寄ってきました。

同じ甲虫の仲間でも、食べるものも、見える時間も、動き方も違う。

もっと離れた虫なら、違いはさらに大きい

わが家で飼育したチョウの中には、昆虫ゼリーの汁を吸ったものもいました。

カマキリは、ケースの上の方にぶら下がるようにして獲物を待っていることがあります。

また、アオモンイトトンボなど多くのイトトンボでは、止まるときに翅を腹部の上で重ねる姿が見られます。一方、シオカラトンボなどでは左右に翅を開いたまま止まります。

食べ方。止まり方。飛び方。隠れ方。獲物の待ち方。

「種類が多い」の意味
虫の多様性は、名前の多さだけではなく、幼児の目の前で実際に比べられる「違い」が多いことなんだと思います。

野外では「広さ」、飼育すると「深さ」が見えてくる

虫との関わりを続けていると、野外観察と飼育では見えるものが少し違います。

外を歩けば、「こんなにいろいろな虫がいる」という多様性の広さが見えます。

一方、実際に飼育すると、「この虫はこんなふうに暮らしている」という一種類ごとの深さが見えてきます。

外では、今日初めて出会う。家では、昨日との違いを見る。この両方を行き来できるのも、虫との関わりの面白さです。

採集した小さな虫を透明な袋越しに近くで観察する幼児
小さな虫は、手元まで来ると体の形が見えてきます。
幼児が手のひらに乗せた甲虫を観察している様子
同じ甲虫でも、動き方や食べ方はそれぞれ違います。

※持ち帰る場合は、その種類に合った環境を大人が用意し、飼育の責任は大人が持つことを前提にしています。

季節と成長、二つの「変化」が見える

虫では、二つの時間の変化を見ることができます。

いつもの場所が変わる

少し前まで見なかったセミが鳴き始める。バッタが目立つようになる。以前よく見た虫が、いつの間にか見つからなくなる。

同じ公園を歩いているだけでも、生きものを通して季節の変化が見えてきます。

一匹の姿そのものが変わる

種類によっては、卵、幼虫、蛹、成虫と、数週間から数か月の中で大きく姿を変えます。脱皮や羽化など、昨日までとはまったく違う姿を見られることもあります。

もちろん生活史や期間は種類によって大きく違います。それでも、幼児が覚えていられる時間の中で「前と違う」を何度も経験しやすいことは、虫の大きな特徴です。

記録や標本にすると、時間を超えて比べられる

虫との関わりは、生きている間だけで終わるとは限りません。

  • 採集
  • 観察
  • 調べる
  • 記録
  • 標本

写真や採集記録を残したり、種類によっては死後に標本として残したりすると、以前の虫とあとから比較することもできます。

ここは「捕まえた後」や「標本作り」の記事と重なるため、この記事では詳しい方法には踏み込みません。

虫なら何でも、どこでも捕っていいわけではない

虫が身近で観察しやすいからといって、何でも自由に捕まえてよいわけではありません。

刺す・咬む・毒を持つなど危険な虫もいますし、場所ごとに採集ルールも違います。希少種や保護対象にも注意が必要です。

東京都建設局も、都立公園での昆虫採集について、公園環境の保全を妨げる行為や商業用の採集は禁止し、詳細は各公園の管理所に確認するよう案内しています。

幼児と虫を探すときは、安全に観察できる種類か、その場所で採集してよいか、持ち帰るなら飼育できるかを大人が判断する必要があります。

虫が苦手な子に無理に触らせる必要もありません。見るだけでも十分に自然観察です。

虫は、幼児の日常の中で「多様性」と「変化」を何度も見せてくれる

こうして考えると、虫が幼児の自然観察に向いている理由は、単に「数が多いから」「種類が多いから」だけではありません。

  • 家の近くでも出会える
  • 10〜15分の散歩でも観察できる
  • 子ども自身が見つけやすい
  • 自分で近づいて確かめやすい
  • 同じ場所でも日によって変わる
  • 種類ごとの行動や食べ物が違う
  • 野外と飼育で違う一面が見える
  • 季節や成長による変化を追える
この記事の結論
幼児の日常生活の距離と時間の中で、「多様性」と「変化」の両方を何度も観察できる。私は、これが虫の大きな強みだと思っています。

「なぜ虫なのか」の先は、別の記事で

この記事では、あえて「虫という生きもの側の特徴」に絞りました。

実際に虫とりをしたとき、子どもの中で観察・予想・試行錯誤がどう起こるのかは「虫取りと思考力」の記事へ。そこから疑問を調べ、比較し、もう一度確かめる探究へどう発展するのかは「最初の研究対象」の記事へ分けています。

まとめ|なぜ、魚でも鳥でもなく「虫」なのか

魚にも、鳥にも、哺乳類にも、それぞれ違った魅力があります。だから、虫だけが知育にいいという話ではありません。

それでも幼児の日常的な自然観察という点では、虫にはかなり特殊な条件がそろっています。

里山へ行かなければ、自然体験ができないわけではありません。

保育園へ行く前の10分でもいい。

いつもの公園でもいい。

昨日コガネムシがいた場所を、今日もう一度見てみる。

「今日は、いないね」

そこからまた、自然を見る時間が始まります。

虫は小さい。でも、幼児が自分で見つけられる世界としては、驚くほど広い。

だから私は、子どもが自然を見る最初の入り口として、やっぱり虫はかなり面白いと思っています。

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