幼児の虫取りは学問の入口|採集・観察・標本作成で育つ「調べる力」

幼児の虫取りは学問の基礎。 外遊び・自然学習
採集・観察・標本で学びの基礎を作る。
自然観察・幼児教育 / Field Study

幼児の虫取りは、学問の入口になる

虫取りは、ただ虫を捕まえて終わる遊びではありません。
どこに虫がいるのかを考え、どう捕まえるのかを工夫し、捕まえた虫を観察し、名前を調べ、写真や標本として残す。
その流れは、幼児にとっての小さな研究活動です。

Theme
採集・観察・記録
Viewpoint
虫取りを学びに変える
Goal
正確に知ろうとする姿勢

採集には知識がいります。
幼稚園くらいの子どもであれば、その方法を少しずつ身につけさせたいところです。

この記事の主張

虫取りは、幼児にとって
自然の中から問いを見つける練習
になる。

大きな括りとしては、まず以下の二つです。

01

どこに虫がいるか

住んでいる地域、周辺環境、季節、時間帯、草木や水辺の有無を知ること。

02

どうやってその虫を捕るか

虫の行動、網の使い方、近づき方、捕まえた後の扱い方を知ること。

Field Knowledge

まず「どこに虫がいるか」を知る

そもそも虫がいないところで、いくら虫取りを頑張っても虫は捕れません。
続かないし、やる気もなくなります。
やるなら、虫がたくさんいるところでやるべきです。

この前の虫取り大会でも、私たちでは到底捕ることができないウバタマムシを主催の方々が捕ってきていました。
聞いてみると、やはりポイントを知っているのです。

虫取りで最初に必要なのは、技術よりも環境を読む力です。
どんな草木があるか。水辺はあるか。雑木林はあるか。
花は咲いているか。日当たりはどうか。季節はいつか。
そうした条件が、虫との出会いを左右します。

これは子どもだけではどうしようもできないところです。
だからこそ、ここは親の力の見せ所だと思っています。

私たちも、今年はいろいろなところの虫取り大会に出かけましたが、一概に田舎がいいとは言えません。
適度に整備された里山環境で、花や雑木林や小川が揃っているところがいいです。
山に行けばいいというわけではありません。もちろん、狙いの虫にもよります。

生物の知識だけではなく、住んでいる周辺の環境に対する知識。
どこにどんな草木や水辺があるか。
採集可能な場所はどこか。
季節はいつがいいか。
かなり経験則に伴うところもあります。
場合によっては下見も必要です。

おすすめのリサーチ方法

結局は人づてが一番いいのではないかと感じました。
昆虫採集の会や昆虫ショップなどで聞き込みをします。
自分では捕れなかったミズカマキリ、ウバタマムシ、カブトムシに会えた時は、
「やっぱりいるんだ!」とモチベーションも上がりました。

Method

虫がいるとわかっても、すぐ捕れるわけではない

いるということがわかっても、すぐに捕れるわけではありません。
その公園のどこで、何時に捕れるかを知る必要があります。

虫を捕ることは、自然の仕組みを読むことでもある。

私も初心者なので、わからないことばかりです。
でも、それが勉強です。
「なぜここには虫がいるのか」
「なぜこの時間に出てくるのか」
「なぜこの植物に集まるのか」と考えると、虫取りはただの遊びではなくなります。

Record

採集の方式:思い出に残すか、画像や動画に残すか、標本にするか

実際に虫がいたとして、どうしますか。
方法はいくつかあります。

残し方 良いところ 弱いところ
思い出 手間がかからず、楽しい体験として残る 時間が経つと忘れやすい
画像・動画 簡単に記録でき、あとから見返せる 似た虫の違いがわかりにくいことがある
標本 形態をじっくり観察でき、記録として残る 命を扱うため、目的とルールが必要

思い出に残す

手間がかかりません。
でも、思い出はなくなります。
勉強のような学び方だと、特になくなりやすいです。
情報量が多すぎるのでしょうね。
脳の一時的保存容量を超えてしまう。
私も記憶力がそんなに良くないので、すぐ忘れます。

継続のためには、達成感を得ることが重要です。
でも、忘れるという経験は達成感を薄れさせてしまいます。
もっとひどいことに、忘れた経験は
「せっかく頑張ったのにもう覚えてないね。やっても仕方ないか」
という逆向きの感情を生み出すこともあります。

だから、成果を形として残すことは非常に大事です。

画像や動画に残す

画像や動画に残すのはありです。
場合によっては画像や動画で十分です。
今はスマホの画質も非常に良いため、写真や動画でも思い出や達成感に寄与できます。

少なくとも、「やったことを覚えている」ということで、快楽を継続することができます。

ただ、画像や動画は簡便であるがゆえに、見返さないと効果が乏しいとも思います。
私は、簡単に得られるデータは見返しにくいと感じています。
見返す前にまた新しいデータが取得されるからです。

それから、標本と比べて、
対象の違いがわかりにくい
というデメリットがあります。

最近、アゲハ蝶、つまりナミアゲハを公園で捕まえたのですが、
恥ずかしながら、それまでオスメスの違いが分かっていませんでした。
動画や画像ではなかなか分からないものです。
それから、蝶の柄も個体によって違うのだということもよく分かりませんでした。

Specimen

標本作成に残す

どこまで理解度を深めるか

画像による虫の判別は、非常に難しいです。
本当にそう思います。
まず、小さいのと動きが早いので、きれいに撮れないという問題があります。
自然に置いたままにしたら飛んでいってしまうし、ケースに入れたままだとうまく撮れない。

蝶、トンボ、バッタ、カブトムシ。
そのレベルの分類なら、画像に撮るだけで十分でしょう。
もしかしたら日記でもいいような気もします。

虫に詳しくなれば、捕らなくて済む。けれど、そこに至るまでに捕る。
遠目で判断できるようになるには、まず手元でじっくり観察する経験が必要になることがあります。

モンシロチョウとアゲハチョウのように遠目で見て判断できる生物種の分類をしたい程度であれば、画像でいいかもしれません。

でも、モンキチョウとキタキチョウ、ツバメシジミとルリシジミのような
似たような虫を撮った画像で区別することができますか?

そこが問題だと思いました。

Accuracy

正確に知ることの重要性を身につける

「区別する必要ある?」
そんな質問が聞こえてきそうです。

私が虫取りを通じて子どもに身につけてほしいのは、単に虫の名前を覚えることではありません。
正確に知ることの重要性を身につけることです。

モンシロチョウは、おそらくほとんどの人が知っています。
アブラナやキャベツなどに卵を産む白い蝶、というイメージもあると思います。

では、「モンシロチョウと似た蝶は?その違いは?」と聞かれたら、ほとんど答えることができないのではないでしょうか。

これはつまり、
「白い蝶=モンシロチョウ」という図式がすでに構築されていて、思考を伴っていないということです。
考えることがないので、発展のしようがない。

ちゃんと知ると、スジグロシロチョウなど、似た白い蝶がいることが分かります。
姿形からの鑑別点もあるし、生息地や食草も違います。

学びの核

疑問が生まれ、発見が生まれる。
これが学習意欲を生み出す。

虫取りを通じて、学問の基盤を形成する

そのためには、次の流れが大事になります。

01

捕まえる

データ収集。まず対象を得る。

02

観察する

観察研究。形、色、動き、いた環境を見る。

03

調べる

考察。図鑑や資料と照らし合わせる。

04

深める

さらに知識を深め、次の問いをつくる。

これって学問の基盤です。
楽しみながら、苦もなくできると思います。

Recommendation

標本作成のすすめ

標本作成をする必要性については、私も疑問がありました。
そもそも、なぜ捕まえるのかというところから入ります。

01

種の同定

捕まえないと、細かい特徴が見えず、種の同定が難しいことがあります。

02

形態と行動の観察

どんな形態や行動をするかを観察したくても、捕まえないと難しいことがあります。

捕まえて、逃すでいいのでは?

捕まえると虫は弱ります。
特に子どもに渡すと弱り方は顕著です。
ちょうちょやトンボの羽はボロボロになって、それを逃したとしても、そのまま死んでしまう場合もあります。

そうでなくても、その後にすぐ捕食されるかもしれません。
こう考えると、
死ぬのが可哀想だから逃すという論理だけでは足りないのではないか
と考えるようになりました。

そもそも、死ぬのが可哀想だと思うのなら、捕まえない方がいい。
捕まえるのであれば、ただ弱らせて終わりにするのではなく、観察し、調べ、必要であれば標本として残し、その命からきちんと学ぶ方がよいのではないか。

Ethics

標本作成は残酷なのか

いろんなところで言われています。
「虫をとって殺して標本にするなんて残酷」
という問いです。

大事なのは、捕ること自体を正当化することではありません。
何のために捕るのか。どのくらい捕るのか。
その虫がいた環境をどう考えるのか。
そこまで含めて、子どもと考えることです。

私は、虫を好きな人は
自然を大切にする人
だと思っています。
だって、自然を大切にしないと虫がいなくなってしまいますから。

虫を数匹採集しても、自然全体やその種自体には大きな影響はありません。
それより、自然を維持せず、殺虫剤や除草剤で自然を整備したり、土地を人工構造物に変えたり、環境破壊を進めることの方が、明らかに多くの生き物を失わせていることがあります。

虫を好きでいることは、環境保全の考えを養うのにも大切です。
そして、大事だと思うに至るには、採集と標本作成という過程が重要だと思っています。

ただし、乱獲はしない。採集禁止の場所では採らない。保護されている種類は採らない。
虫取りを学びにするためにも、ルールと節度は必ず必要です。

一度家に持ち帰った生き物を、あとから安易に外へ放すのも慎重に考えたいところです。
虫には多くの微生物が付着していますし、飼育環境を通じて自然由来ではないものに触れている可能性もあります。
だから、外に放つことが生態系維持の観点から本当に良いかは分かりません。

そう考えると、採集した虫をただ弱らせて終わりにするよりも、
綺麗な標本にして、観察と記録として残す
という考え方にも意味があると思っています。

Rules

子どもと虫取りをするときに確認したいこと

  • 採集してよい場所か確認する
  • 私有地に勝手に入らない
  • 公園や施設のルールを守る
  • 保護されている種類を採らない
  • 必要以上にたくさん捕らない
  • 飼育できない生き物を持ち帰らない
  • 持ち帰った生き物を安易に外へ放さない
  • 水辺、ハチ、マダニ、熱中症に注意する
Conclusion

まとめ|虫取りは、学問の入口になる

子どもの虫取りは、ただの外遊びではありません。

どこに虫がいるのかを調べる。
どうやって捕まえるのかを考える。
捕まえた虫を観察する。
写真や動画に残す。
必要であれば標本にする。
図鑑で調べる。
似た虫との違いを知る。

この流れは、まさに学びの流れです。

  • 捕まえることは、データ収集
  • 観察することは、観察研究
  • 調べることは、考察
  • さらに知ることは、次の問いをつくること

虫取りを通じて、子どもは自然の中から疑問を見つけるようになります。
そして、疑問が生まれると、もっと知りたくなります。

私は、その「もっと知りたい」という気持ちこそ、幼児期に育てたい大切なものだと思っています。

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